落合博満氏に学ぶリーダーシップ
『采配』 落合博満 (著)
現役時代は三冠王を3度も獲得し、
中日ドラゴンズで監督として務めた8年間すべてAクラス。
リーグ優勝4回、2007年には53年ぶりとなる日本一にも輝き、
名監督としても歴史に名を刻まれました。
選手にあわせて接し方を変える落合氏
落合監督はマスコミに対してあまり多くを語らず「記者泣かせ」
とも言われていますが、選手に対してもあまり多くを語りません。
2011年にリーグ最多の79試合に登板し、防御率 0.41 という驚異の結果を
残した中継ぎのエース・浅尾投手は入団から4年間ほとんど
話しかけられることがありませんでした。
ある試合でフォアボールによる出塁を許してしまった直後、
「この回は、お前に任せた」
と言葉をかけられ、監督から認められたと感じたそうです。
一方でセ・リーグ最高の二塁手とも評される荒木雅博選手に対しては、
積極的に声を掛けられます。落合監督は荒木選手の評価について、
以下のように述べられています。
「自分を過大評価するやつが多いこの世界で、
自分を過小評価する珍しいやつ」
落合監督は荒木選手に自信を持ってプレーに臨んでもらえるよう、
積極的に声をかけられています。このように落合監督は、相手に合わせて
言葉がけのスタイルをうまくあわせられています。
落合流指導は「指導してはならない」
また、落合監督はコーチ陣に対して以下のルールを徹底するように
求められていました。
「こちらから選手を指導してはならない。
選手が助けを求めてきた時に初めて指導すればいい」
指導することが仕事であるコーチにとって、「指導してはならない」
というのはとても大変なルールです。
しかしその次に続く「選手が助けを求めてきた時に指導する」というのは、
コーチングという点において、基本ともいえるポイントなのです。
コーチとは、もともと「馬車」を意味する “Coach” から来ている言葉です。
「馬車」は馬が勝手に行きたい方向に連れまわすのではなく、
乗る人が望む所に連れて行くのが役目です。
このことから「コーチング」とは「相手が望むところに送り届ける」
という意味に派生して生まれたものです。
つまりコーチが選手を強制的に指導するのではなく、
選手が指導を求めた時に、選手の望む方向へ導くのが役目なのです。
NLPも「相手の心理を操作する」のではなく、
相手が望む状態になるように導くというのが前提としてあります。
誰しも「自分の心を操られたい」とは願っていません。
一方で、信頼している相手の支えが欲しい、尊敬している人から
指導してほしいと願うことはあります。
その際に相手の立場に立って、相手が望む結果を得るために、
導いていくのが指導者の役目です。
リーダーは社員を1から10まで常に指導することではなく、
社員の能力を見極めて信頼し、社員から助言を求められた時になって、
初めて手をさしのべ、導いていくという姿勢を持っておきましょう。
経済人から学ぶリーダーシップ